「練習ではあんなにできるのに、試合になると急に消極的になる」。その正体は性格ではなく「失敗への恐れ」です。恐れは家庭の声かけで小さくできます。本記事では、思い切りプレーできる子に変わる関わり方を、OK/NG例つきで具体的に解説します。
ボールが来ても自分から動かない。打席で見送ってばかり。本当はもっとできる子なのに、と歯がゆく感じている親御さんは少なくありません。でも、消極的なプレーは「やる気がない」サインではなく、多くの場合「ミスして怒られたくない」「失敗したくない」という恐れのサインです。
恐れは変えられない性格ではありません。家庭で「ミスしてもいい」という安心感をつくれば、子どもは自分から動けるようになります。今日から使える声かけを順番に見ていきましょう。
結論:消極的さの正体は「性格」ではなく「失敗への恐れ」
消極的な子を見ると、つい「気が弱い」「引っ込み思案な性格だから」と考えてしまいがちです。でも、ここで「性格」と決めつけてしまうと、打つ手がなくなってしまいます。
注目したいのは、「失敗への恐れ」という、変えられる要因です。練習でできて本番でできないのは、実力の問題ではありません。「失敗したらどうしよう」という不安が体をこわばらせ、本来の動きを止めているのです。
心理学の研究でも、過度に失敗を恐れる傾向は環境の影響が大きいとされています。シンガポール国立大学が2017年に発表した研究によると、厳しくしつけられた子どもは過剰に失敗を恐れ、失敗した自分を責めやすくなると報告されています(出典:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボによる同研究の紹介)。つまり、恐れは生まれつきではなく、まわりの関わりで強くも弱くもなるということです。
だからこそ、親が変えられる部分はとても大きいのです。
親の関わりが「恐れ」を強める3つのパターン
良かれと思った声かけが、かえって「ミスへの恐れ」を育ててしまうことがあります。まずは無意識にやりがちなパターンを知っておきましょう。
1. ミスを「減点法」で指摘してしまう
「なんであそこでミスしたの?」「もっとできたでしょ?」。こうした声かけは、できなかった部分にばかり光を当てる減点法です。前出のこどもまなび☆ラボによると、減点法での評価が続くと子どもは萎縮し、自己否定感の強い「失敗を過剰に恐れる子」に育ちやすくなります。
2. 結果だけをほめる/叱る
「勝ってえらい」「点を取ってすごい」と結果だけをほめると、子どもは「結果を出さないと認めてもらえない」と感じます。すると、失敗しそうな挑戦を避け、確実に成功できる安全なプレーばかり選ぶようになります。
3. 試合中に指示を出し続ける
観客席から「打て!」「行け!」「下がって!」と指示を飛ばし続けると、子どもは「自分で判断したら怒られる」と感じます。スポーツメンタルトレーナーの中嶋進氏も、手取り足取りの関わりや短期的な結果の要求が子どもの主体性を奪うと指摘しています。自分で決められない子は、迷って動けなくなります。

「ミスしてもいい」が伝わる家庭の声かけ【OK/NG例】
恐れをやわらげる第一歩は、家庭が「ミスしても大丈夫な場所」になることです。スポーツ心理学でいう「心理的安全性」が、子どもが思い切って挑戦する土台になります。具体的なセリフで見ていきましょう。
ミスを責めない
◯ OKな声かけ
「ナイスチャレンジ!攻めたのが良かったよ」
「ミスは挑戦した証拠。気にしなくていい」
× NGな声かけ
「だから言ったでしょ、消極的だって」
「またミスして…しっかりしてよ」
「なぜ」ではなく「何」で聞く
ミスを振り返るときの聞き方も大切です。「なぜミスしたの?」と「なぜ」で問うと、圧が強く、子どもは自己否定に陥りがちです。中嶋氏によると、「何が難しかった?」と「何」で聞くと、「ミスした自分」と「ミスの要因」を切り離して考えられ、自分を客観的に見つめやすくなります。
◯ OKな声かけ
「何が難しくてミスになったのかな?」
「次はどんなふうに試してみたい?」
× NGな声かけ
「なんであんなミスしたの?」
「どうしてできないの?」
結果ではなく「挑戦」を評価する習慣をつくる
思い切りプレーできる子に共通するのは、「結果」ではなく「挑戦したこと」そのものをほめられている点です。スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱した「成長マインドセット」の研究でも、能力ではなく努力や過程をほめられた子は、難しい課題にも前向きに取り組むようになると示されています。
家庭での評価を「加点法」に切り替えましょう。できなかった20点ではなく、できた80点に目を向けるのです。
◯ OKな声かけ
「自分から前に出たね、それが一番大事」
「失敗を恐れず振り抜いたのがカッコよかった」
× NGな声かけ
「勝ったからえらい」だけで終わる
「決めたとこだけ」しかほめない
挑戦そのものを認められた子は、「ミスしてもチャレンジすれば認めてもらえる」と学びます。これが、消極的なプレーから抜け出す一番の近道です。
試合前・試合中の具体的な声かけ例【OK/NG】
試合前
試合前は「勝て」「ミスするな」より、やることをシンプルに一つだけ伝えると、子どもは動きやすくなります。
◯ OKな声かけ
「楽しんでおいで。思い切りいこう」
「いつも通り、最初の一歩を早くね」
× NGな声かけ
「絶対ミスするなよ」
「負けたら承知しないからね」
試合中
試合中はあれこれ指示せず、挑戦を後押しする一言に絞ります。判断は本人に任せましょう。
◯ OKな声かけ
「ナイスチャレンジ!」(ミスしても)
「いいよ、その積極性!」
× NGな声かけ
「何やってるの!」
「だから言ったのに」
試合後
試合後の第一声は、結果ではなく「お疲れさま」とねぎらいから。詳しい振り返りは、子どもの気持ちが落ち着いてからにします。
◯ OKな声かけ
「お疲れさま。今日いちばん攻めた場面はどこ?」
「最後まで走りきってたね」
× NGな声かけ
「なんで負けたと思う?」(開口一番)
「あのプレーがダメだった」
コーチ・チーム環境との向き合い方
家庭で安心感をつくっても、チームで叱られ続ける環境だと恐れは消えにくいものです。とはいえコーチを変えることは簡単ではありません。親ができるのは、家庭を「最後の安全基地」にすることです。
チームで厳しく言われた日こそ、家では責めずに受け止めましょう。「今日は大変だったね」と気持ちを受容するだけで、子どもは翌日また前を向けます。指導方針に気になる点があれば、子どもの前ではなく、コーチと個別に冷静に相談するのがおすすめです。
親が「結果」ではなく「挑戦」を見てくれていると分かれば、子どもは外で多少厳しくされても折れにくくなります。
今日からできる3つの行動
- 第一声を「ナイスチャレンジ」に変える:ミスの指摘より先に、挑戦したことを認める。
- 「なぜ」を「何」に言い換える:「なぜミス?」→「何が難しかった?」で、自己否定を防ぐ。
- 試合前の声かけを一つに絞る:「ミスするな」をやめ、「思い切りいこう」だけ伝える。
どれも今日の練習や次の試合からすぐ試せます。まずは一つ、続けてみてください。
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試合で消極的なのは性格なので直らないのでは?
多くは性格ではなく「失敗への恐れ」が原因です。恐れは家庭の安心感や声かけで小さくできる、変えられる要因です。性格と決めつけず、まず『ミスしてもいい』が伝わる関わりから始めてみてください。
「思い切りいけ」と言っても動きません。どうすれば?
言葉だけでは恐れは消えません。まずは普段からミスを責めないこと、結果ではなく挑戦をほめることを続け、『失敗しても大丈夫』という実感を積み重ねるのが先です。土台ができると、自然と動けるようになります。
試合中、つい指示を出してしまいます。
指示を出し続けると『自分で判断したら怒られる』と感じ、かえって動けなくなります。試合中は判断を本人に任せ、『ナイスチャレンジ』など挑戦を後押しする一言に絞りましょう。
ミスを振り返らせたいときの聞き方は?
「なぜミスしたの?」ではなく「何が難しかった?」と『何』で聞くのがコツです。『なぜ』は圧が強く自己否定につながりやすいですが、『何』ならミスした自分とミスの要因を切り離して客観的に考えられます。
コーチが厳しく、家でフォローしきれません。
家庭を『最後の安全基地』にすることが大切です。厳しく言われた日こそ家では責めず、『今日は大変だったね』と気持ちを受け止めましょう。気になる指導は子どもの前ではなく、コーチと個別に冷静に相談するのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。



