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コーチの話を聞かない子供|指導が入らない3つの原因と家でできる「聞く力」の練習【5つの指示のうち残るのは平均2.7個という研究・聞けていない3タイプの判定質問・1つだけ持ち帰る型・練習後3分の振り返り・競技別に入りにくい場面・親の3つの逆走・OK/NG声かけ例】

2026/10/21 | やる気・主体性

結論から書きます。コーチの話を聞いていないように見える子の多くは、聞く気がないのではありません。一度に渡された指示の数が、その子が持ち帰れる量を超えているだけです。

だから親がかける一言は「ちゃんと聞いてるの?」ではありません。「今日言われたこと、1つだけ教えて」です。数を絞ると、同じ子が急に覚えて帰ってくるようになります。

この記事では、聞けていない子の3タイプの見分け方、家でできる「1つだけ持ち帰る」練習、練習後3分の振り返りの手順を、OK声かけ例とNG声かけ例つきで整理します。

この記事の結論(先に3行)

  • 「聞いていない」のではなく、5つ渡されて2つしか残っていないことが多い
  • 原因は「届いていない/意味がわからない/納得していない」の3つに分かれ、対応がまったく違う
  • 親の役割は聞かせることではなく、持ち帰る数を1つに絞ること

同じ5つの指示を聞いて、覚えていたのは「平均2.7個」と「平均4.2個」に分かれた

まず、親として知っておくと見方が変わる研究があります。

スポーツ心理学者のBuszardらが2017年に『Frontiers in Psychology』誌に発表した研究(Buszard, Farrow, Verswijveren, Reid, Williams, Polman, Ling & Masters, 2017, 8:1350)によると、8〜10歳(平均9歳6か月)の子ども90人を対象に、バスケットボールのシュートを240本・12ブロックに分けて練習させた実験が行われました。

各ブロックの前に、子どもたちはシュートのフォームに関する5つの指示を読みます。「ボールを一度バウンドさせる」「ひざを曲げる」といった具体的な指示です。渡された指示の内容は、全員同じでした。

違ったのは結果です。1週間後の確認で、指示を平均4.2個思い出せた子のグループと、平均2.7個しか思い出せなかった子のグループに分かれました(差1.5個、p=0.01)。

そして肝心のシュートの成績は、こうなりました。

覚えていた指示の数練習前→1週間後のシュート成績
覚えていられた子のグループ平均4.2個 / 5個+5.6ポイント(向上)
覚えきれなかった子のグループ平均2.7個 / 5個−5.5ポイント(低下)
Buszard et al. (2017) Frontiers in Psychology 8:1350 の結果より作成。両グループは練習開始前の成績に差がなかった(p=0.81)。1週間後の差は11.8ポイント(p<0.001, d=1.04)。

注目してほしいのは、練習を始める前の実力に差がなかった点です(p=0.81)。同じ本数、同じ指示、同じ期間練習して、一方は伸び、一方は下がりました。

さらに具体的なデータもあります。「ボールを一度バウンドさせる」という指示を実際にやれていた割合は、覚えていられた子が約56%、覚えきれなかった子が約27%でした。指示が頭に残っていない子は、半分の頻度でしか実行できていなかったことになります。

指示が「1つ」のときは、差が出なかった

ここが実践上もっとも重要な部分です。

同じ論文が比較対象として挙げている先行研究(Brocken et al., 2016)では、指示を1つだけ与えた場合、覚える力の差は学習の差につながりませんでした。つまり差が開いたのは「指示が5つあったから」です。

論文の著者たちはこう結論づけています。「ワーキングメモリの資源に過剰な負荷をかけることは、容量の小さい子どもの学習を妨げる」。

ここから導ける親の結論

子どもが指導を受け取れないのは、能力の問題でも態度の問題でもなく、渡された量の問題であることが多い。そして量は、親が家で絞り直せる。

コーチは10人、20人を同時に見ています。ひとりの子に合わせて指示を1つに絞ることは、現場では現実的ではありません。だからこそ、家に帰ってから絞る役が必要になります。それが親の出番です。

体育館で床に座ってコーチの話を聞く子供たち
全員が同じ話を聞いていても、持ち帰れている量は子どもによって大きく違う

「聞いていない子」に見える3つのタイプ|対応がまったく違う

「話を聞かない」とひとくくりにすると、対応を取り違えます。実際には3つのタイプがあり、それぞれ必要な手当てが違います。

タイプ1:届いていない(容量オーバー型)

もっとも多いのがこれです。本人は聞こうとしています。目もコーチを見ています。それでも残りません。

  • コーチが3つ言うと、最後の1つしか覚えていない
  • 言われた直後は直せるが、次の練習日には元に戻っている
  • 「今日なに言われた?」と聞くと「えーっと…忘れた」と素直に言う
  • 学校でも、連絡事項を1つ飛ばして帰ってくることがある

このタイプに「ちゃんと聞け」と言っても、何も変わりません。容量を増やす話ではなく、入れる数を減らす話だからです。

なお、ギャザコールとアロウェイが『Working Memory & Learning』で整理しているように、ワーキングメモリの弱さは「多段階の指示に従えない」「途中で手が止まる」「ぼーっとする」といった形で表に出ます。これはやる気の問題と見分けがつきにくいのが厄介なところです。推奨される支援も「指示の段数を減らす」「番号を振る」「本人から聞き返させる」で、怒ることは含まれていません。

タイプ2:届いたが、意味が動きと結びついていない(翻訳できない型)

指示は覚えています。でも、それが自分の体のどこを、どう動かすことなのかがわかっていません。

  • 「言われたことは言えるけど、やってみせて」と言うとできない
  • 「体を開いて」「もっと前で」など、抽象的な言葉を復唱だけできる
  • 練習では直せるが、試合では一度も出てこない
  • 「わかった」と即答するが、内容を聞くと言葉が出てこない

このタイプの子は、言葉を音として覚えているだけです。コーチの言葉と自分の動作の間に、翻訳の工程が1つ抜けています。

「わかった」と言うのに実行されない状態が続いているなら、「わかんない」しか言わない子供への関わり方もあわせて読むと、聞き出し方の角度が増えます。

タイプ3:届いて、わかっていて、納得していない(保留型)

高学年に増えるタイプです。中身は理解しています。ただ、やりたくない、または別の考えを持っています。

  • 「でも」「いや」が先に出る
  • 「前のコーチは違うこと言ってた」と言う
  • 特定のコーチの言うことだけ入らない
  • 返事はするが、動きがわざと小さい

このタイプに「1つに絞る」をやっても効きません。量の問題ではないからです。必要なのは納得の経路で、しかも納得させる役は親ではありません(後述します)。

特定のコーチにだけ反発している場合は、「コーチが贔屓してる」と言う子供への対応やコーチに叱られて落ち込む子への声かけの内容も関係してきます。

3タイプの見分け方|練習後に3つ質問するだけ

原因の取り違えを防ぐために、練習後に3問だけ聞きます。順番を変えないことが大事です。

  1. 「今日、コーチに言われたこと、1つだけ教えて」(思い出せるか)
  2. 「それ、ちょっとやってみせて」(動きに変換できるか)
  3. 「それ、やってみてどう思った?」(納得しているか)

答え方で、タイプがほぼ判別できます。

子どもの答え方判定必要な手当て
「忘れた」「えーっと…」で出てこないタイプ1(届いていない)持ち帰る数を1つに絞る
言葉は言えるが、やってみせられないタイプ2(翻訳できない)言葉を動作に訳す
言えるし、やれる。でも「意味なくない?」タイプ3(納得していない)納得の経路をつくる
言えるし、やれるし、「やってみたらできた」聞けている今の形を続ける(ここで褒める)
3問の答え方によるタイプ判定表

この質問でやってはいけないこと

3問を尋問にしないこと。答えられなかった時に「なんで覚えてないの」と言った瞬間に、この質問は二度と機能しなくなります。

答えが出てこなかったら、「じゃあ次は1つだけ持って帰ってきてよ」で終わらせます。それだけで次回の精度が上がります。

なお、1回で判定しようとしなくて構いません。3〜4回聞くと傾向が見えます。日によって違うなら、疲労や睡眠の影響も疑ってください。

指導が入らないと何が止まるのか|修正サイクルが1周も回らない

上達は、だいたいこの4つの工程でできています。

  1. コーチが課題を伝える
  2. 子どもがそれを持ち帰る
  3. 次の練習までに試す
  4. コーチが変化を見て、次の課題を伝える

聞き取りが落ちている子は、2番で毎回切れます。すると3番が起きず、4番でコーチは「まだ同じことを言う」しかなくなります。

ここで起きるのが、もっとも避けたい誤解です。コーチから見ると「何度言っても直らない子」になり、子どもから見ると「いつも同じことで怒られる」になります。どちらも悪意がないのに、関係が削れていきます。

逆に言えば、1周でも回せば景色が変わります。1つだけ持ち帰り、1回だけ試し、次の練習で「お、やってるな」と言われる。この1周が、次の指示を聞く動機になります。

練習量を増やしても伸びないと感じているなら、量より先にこのサイクルを疑ってください。チームの練習が物足りない子供で扱った「練習が足りないのではなく中身が変わっていない」話とも重なります。

タイプ1への対応|「1つだけ持ち帰る」の型をつくる

やることは1つです。練習から持ち帰る荷物を1個にする。親が決めるのではなく、子どもに選ばせます。

行き:家を出る前の10秒

練習に行く前に、こう言います。

OK声かけ例(行き)

「今日、コーチに言われたこと1個だけ持って帰ってきて。帰りに聞くね」

「1個でいいよ。全部覚えなくていいから」

これだけで、練習中の聞き方が変わります。「全部覚える」は無理ですが、「1個だけ探す」はできるからです。目的が1つになると、聞く構えが変わります。

帰り:帰り道の最初の1分

質問は1つだけ。先ほどの3問のうち、まず1問目です。

OK声かけ例(帰り)

「1個、なんだった?」

(出てきたら)「おお、それ覚えてたんだ。どうやるやつ?」

(出てこなかったら)「じゃあ次は1個だけね。それでいいよ」

ここで追加の質問をしないのがコツです。「ほかには?」と聞いた瞬間に、1個に絞った意味が消えます。

家:次の練習までに1回だけ試す

持ち帰った1個を、家で1回だけやります。5分で終わる量にします。

  • バットの構えなら、素振り10本だけ
  • ボールの置きどころなら、壁当て20本だけ
  • 入水の角度なら、陸で姿勢を10回だけ
  • 顔の向きなら、鏡の前で10回だけ

「1回だけ試した」という事実が、次の練習でコーチに見つけてもらうための材料になります。メニューの立て方で迷うなら小学生の自主練メニューの決め方が参考になります。

今日からできる行動①

次の練習の行きに、「今日は1個だけ持って帰ってきて」と言う。帰りに1問だけ聞く。これだけで、1週間後の持ち帰り率が変わります。

1つが続いたら、2つに増やす

2〜3週間、1個が安定して出てくるようになったら、2個にします。いきなり5個に戻さないこと。

増やす順番は「1個 → 2個 → 2個+自分で気づいたこと1個」です。最後の段階まで来ると、子どもは自分で課題を見つけ始めます。これが指示待ちから抜ける入口になります。

タイプ2への対応|言葉を動作に翻訳する3ステップ

覚えているのに実行されないなら、言葉を動きに訳す作業を家でやります。

ステップ1:3語で言い直させる

コーチの言葉をそのまま覚えていても使えません。自分の言葉に、3語以内で短くさせます。

コーチの言葉(長い)子どもの3語(使える形)
「もっと体を開いて、早めに準備して」「先に半身」
「ボールの下に入って、肘を立てて」「下・肘立てる」
「打つ前に一度バウンドさせて落ち着いて」「1回バウンド」
「蹴る前に相手を見てから」「見てから蹴る」
「入水のときに頭を下げすぎない」「頭、下げない」
長い指示を「現場で思い出せる長さ」に圧縮した例

なぜ3語かというと、試合中や練習中に一瞬で思い出せる長さがその程度だからです。長い指示は、思い出している間にプレーが終わります。

これは親が決めてはいけません。親が訳すと、親の言葉になります。「どういう言い方なら覚えやすい?」と聞いて、本人に作らせます。

ステップ2:やってみせる(部屋でも可)

3語ができたら、その場でやらせます。グローブもボールもなくていいので、動きだけ。

  • できていたら「それそれ、それで合ってる」と確定させる
  • できていなかったら「コーチ、どんな風にやってた?」と再現させる
  • 親が正解を教えない(親は競技指導をしない)

ここで親が「違うよ、こうだよ」と教え始めると、コーチの指示と親の指示が二重になります。子どもはどちらを聞けばいいか分からなくなり、結果としてどちらも入らなくなります。親がやるのは確認までです。

ステップ3:動画と重ねる

自分の動きが言葉と合っているか、本人が確認できると定着が早くなります。スマホで10秒だけ撮って見せる方法は子供の試合動画の振り返り方で詳しく扱っています。

コツは、3語で言ったことだけを見ることです。動画を見ながら他の欠点を指摘し始めると、また5つに戻ります。

今日からできる行動②

持ち帰った1個を、子ども自身の3語に縮めさせる。そのままやってみせてもらう。親は正解を教えず、「それで合ってる?」だけ聞く。

タイプ3への対応|納得させるのは親の仕事ではない

「でも」が先に出る子に、親が「コーチの言うことは聞きなさい」と言っても、何も動きません。親の言葉には、競技上の裏づけがないからです。

ここで親がやることは2つだけです。

1つ目:言い分を最後まで聞く(同意も否定もしない)

まず、子どもが何に引っかかっているのかを言葉にさせます。

OK声かけ例(タイプ3)

「なるほど。なんでそう思った?」

「前のやり方のほうが良かった理由ってある?」

「それ、コーチには言った?」

最後の「コーチには言った?」が本題です。納得していないなら、納得する相手はコーチです。親が通訳になると、子どもはコーチと直接やり取りする機会を失います。

2つ目:聞き方を一緒に準備する

「コーチに言え」で終わると、ほとんどの子は言いません。言い方を一緒に作ります。

NGな聞き方(否定から入る)OKな聞き方(確認から入る)
「なんでそうするんですか」「こうやるのは、どういう狙いですか」
「前のコーチは違いました」「前はこうやってました。どこを変えればいいですか」
「それ、やりにくいです」「ここが引っかかるんですけど、どこを直せばいいですか」
子どもがコーチに確認するときの言い方

この経験を1回でもすると、子どもの中で「指示は確認できるもの」に変わります。言われたことを飲み込むか反発するかの二択から抜けられます。

これは現場の指導の考え方とも合っています。日本スポーツ協会がスポーツ庁の検討会に提出した資料(「JSPOの取組について〜公認スポーツ指導者養成の観点から〜」2024年12月23日、持続可能な国際競技力向上のための施策に関する評価検討会 第2回 資料3)によると、公認スポーツ指導者は「プレーヤーズセンタードの考え方のもとに」、「常に自らも学び続けながらプレーヤーの成長を支援する」ことが求められるとされています。選手本人が中心という前提なら、本人が疑問を確認するのは筋の通った行動です。親が代わりに飲み込ませる必要はありません。

ただし、子ども本人がどうしても言えない場合、親が代わりにコーチへ聞く選択肢もあります。その際の伝え方はコーチに嫌われる親の特徴7つで、言ってよいこと・避けたいことを分けて整理しています。

なお高学年で「でも」が増えるのは、発達として自然な面もあります。子供の反抗期でスポーツのやる気が落ちた時の関わり方もあわせて確認してください。

練習後3分の振り返り|質問の順番を変えるだけで出てくる

「今日どうだった?」と聞いて「ふつう」で終わるのは、質問が広すぎるからです。範囲を狭めると答えが出ます。

出てこない聞き方出てくる聞き方理由
「今日どうだった?」「今日、コーチに言われたこと1個教えて」範囲が1個に限定される
「ちゃんと聞いてた?」「どのタイミングで言われた?」記憶の手がかりが場面になる
「できるようになった?」「やってみてどうだった?」評価ではなく感想を聞いている
「なんで直らないの?」「どこが難しい?」責めから具体に変わる
「次は何に気をつける?」「明日の練習、1個だけ何やる?」抽象から行動に変わる
同じことを聞いているのに、答えの出方が変わる質問の言い換え

順番は「①言われたこと → ②やってみた感想 → ③次の1個」の3段です。3分で終わります。長くしないほうが続きます。

タイミングは「帰ってすぐ」より「落ち着いてから」

練習直後は疲れていて、言葉が出ません。おすすめは次の2つです。

  • 帰りの車や自転車で、1問目だけ(「1個なんだった?」)
  • 夕食後や風呂上がりに、2問目と3問目

分けて聞くほうが、まとめて聞くより出てきます。これは「振り返りの時間を取る」よりハードルが低く、続きます。

今日からできる行動③

今日の練習後、「今日どうだった?」を使わない。代わりに「今日、コーチに言われたこと1個教えて」から始める。これだけで答えの出方が変わります。

競技別|コーチの指示が入りにくい場面と親の一言

競技によって、指示が届きにくい場面は決まっています。そこを知っていると、「聞いていない」の見え方が変わります。

競技指示が入りにくい場面家で絞る1個の例
野球・ソフトボール打席や守備の最中に外野から飛んでくる声。プレー中は処理できない「構えに入る前に1回バウンド」など始動前の1点
サッカープレー中のサイドコーチング。走りながらは入らない「出す前に顔を上げる」など判断の前の1点
バスケットボール試合中の連続指示。流れが速く記憶が上書きされるタイムアウトで言われた1個だけを持ち帰る
バレーボールローテーションごとに指示が変わり、どれが自分向けか不明「自分のポジションでの1個」に限定して聞く
水泳水中は声が届かない。ターンの指示が特に抜ける壁の前の1動作(頭の位置など)だけ
陸上フォームの指示が抽象的になりやすい「腕」「接地」どちらか1か所に限定
剣道・柔道所作と技術の指示が同時に来る「技」か「所作」のどちらかに今週は限定
体操・新体操一度に複数の修正が入り、恐怖心も重なる怖くない部分の1個から直す
テニス・バドミントン・卓球ラリー中の声は入らない。ポイント間が勝負ポイント間に思い出す3語を決めておく
ダンス・チア全体の振り入れと個別修正が混ざる自分に言われた1個だけメモさせる
競技別:指示が届きにくい場面と、家で絞る1個の例

共通するのは「プレー中の声は、ほぼ入らない」ことです。入るのは、始動の前と、プレーが切れた直後です。家で絞る1個は、できるだけこのタイミングで使えるものにします。

試合中に周りの声が多すぎて処理できなくなっている場合は、試合で周りの声が気になる子供への関わり方も確認してください。

親がやりがちな3つの逆走

良かれと思ってやると、聞く力を下げてしまう関わりが3つあります。

逆走1:家で指示を足す

コーチが5つ言ったあと、家で親がさらに2つ足す。これで7つになります。

親の2つは、たいてい正しいことです。だからこそ厄介です。親の役割は足すことではなく、減らすこと。家は絞る場所だと決めてしまうのが一番早い解決です。

よくある形は「コーチの話を聞いていなかった」ことへの指導が、そのまま新しい指示になってしまうパターンです。心配から口数が増えている自覚があるなら、スポーツの親の過干渉を見守りに変える方法が参考になります。

逆走2:「ちゃんと聞いてるの?」と確認する

この一言は、聞き取りを増やしません。増えるのは「聞いてるよ」という返事だけです。

そして返事をした時点で、子どもは「聞いた側」になり、覚えていなかったことを言い出せなくなります。忘れたと言えなくなるほうが、よほど損失が大きいです。

「忘れた」を安全な回答にしておくこと。これが長期で効きます。

逆走3:覚えていたことを評価せずに流す

1個覚えて帰ってきた日に、何も言わずに終わる。これが一番もったいない逆走です。

覚えていた事実そのものを、短く認めます。「よく覚えてたね」で十分です。長い褒め方は不要で、行動の直後に短くのほうが効きます。

逆に、覚えてきた1個の内容について「それだけ?」「もっとあったでしょ」と言うと、次から出てきません。

OK声かけ例/NG声かけ例まとめ

場面NG声かけ例OK声かけ例
練習に行く前「今日はちゃんと話聞いてきなさい」「今日、言われたこと1個だけ持って帰ってきて」
帰り道「ちゃんと聞いてた?」「1個、なんだった?」
覚えていなかった「なんで覚えてないの」「じゃあ次は1個だけね。それでいいよ」
覚えていた(何も言わない)「お、よく覚えてたね。どうやるやつ?」
言えるのにできない「わかってないじゃん」「ちょっとやってみせて。それで合ってる?」
指示が抽象的だった「こうやるんだよ」(親が教える)「どういう言い方なら覚えやすい?」
「でも」と言う「コーチの言うことは聞きなさい」「なんでそう思った? それ、コーチには言った?」
納得していない「文句言わずにやりなさい」「どういう狙いですか、って聞いてみたら?」
振り返りを始める「今日どうだった?」「今日、コーチに言われたこと1個教えて」
次に向けて「次はちゃんとやりなさい」「明日の練習、1個だけ何やる?」
同じ注意が続いている「また同じこと言われてるよ」「その1個、家で1回だけやっとく?」
コーチに怒られた日「怒られるのはあんたが聞かないから」「何を直せって言われたか、1個わかる?」
OK声かけ例/NG声かけ例の対応表

全体を通して共通しているのは、「聞かせようとする言葉」をやめて「数を絞る言葉」に変えることです。

普段の口ぐせを広く見直したい場合は、子供のスポーツNG声かけ7選と「もっと頑張れ」は逆効果?伸びる励まし方もあわせて確認してください。

今日からできる3つの行動

  1. 次の練習の行きに「1個だけ持って帰ってきて」と言う。これだけで聞く構えが変わります。
  2. 帰り道の質問を1問に減らす。「1個、なんだった?」のみ。追加質問はしない。
  3. 持ち帰った1個を、本人の3語に縮めさせて、家で1回だけやる。5分で終わる量にする。

この3つを2週間続けると、「聞いていない子」だったのが「1個は確実に持ち帰る子」になります。そこから2個に増やしていけば十分です。

上達が見えないと感じている時期なら、持ち帰った1個が積み上がっていること自体を記録に残すと効きます。やり方はスポーツの上達を実感できない子供への成長の見える化で扱っています。

あわせて読みたい

コーチの話を聞かない子に「ちゃんと聞きなさい」と言うのはダメですか?

効果が出にくい言い方です。多くの子は聞こうとしており、問題は聞く気ではなく、一度に渡された指示の数が持ち帰れる量を超えていることにあります。「ちゃんと聞きなさい」で増えるのは「聞いてるよ」という返事だけで、持ち帰る量は変わりません。代わりに「今日、言われたこと1個だけ持って帰ってきて」と数を指定してください。目的が1つになると、練習中の聞き方そのものが変わります。

指示を1つに絞ると、他の指示を覚えなくなりませんか?

短期的には他の指示は残りません。ただし5つ渡しても実際に残るのは2〜3個で、しかも実行率が下がります。Buszardらの2017年の研究では、5つの指示のうち覚えていたのが平均2.7個だったグループは1週間後に成績が低下し、平均4.2個だったグループは向上しました。確実に1個を回して、次の練習で変化を見てもらうサイクルを作るほうが、結果として受け取れる指示の総量は増えます。1個が安定したら2個に増やしてください。

「わかった」と言うのに、まったくできていません。どうすればいいですか?

言葉を音として覚えているだけで、動きに結びついていない状態です。「ちょっとやってみせて」と実際にやらせて確認してください。できていなければ「コーチ、どんな風にやってた?」と再現させます。そのうえで、コーチの言葉を子ども自身に3語以内に縮めさせます(例:「もっと体を開いて早めに準備して」→「先に半身」)。短い言葉のほうがプレー中に思い出せます。ここで親が正解を教えると、コーチの指示と親の指示が二重になり、どちらも入らなくなるので避けてください。

特定のコーチの言うことだけ聞きません。親はどう関わればいいですか?

納得していないタイプなので、数を絞っても変わりません。まず言い分を最後まで聞き、同意も否定もせずに「なんでそう思った?」「それ、コーチには言った?」と確認します。納得する相手はコーチなので、親が通訳になると直接やり取りする機会を失います。そのうえで聞き方を一緒に準備してください。「なんでそうするんですか」ではなく「こうやるのは、どういう狙いですか」のように、否定ではなく確認から入る形にすると話が進みます。

練習中にコーチが言ったことを、どうして全然覚えていないのでしょうか?

プレー中に飛んでくる声は、ほとんど処理されません。走りながら、打ちながら、泳ぎながらでは、言葉を記憶に残す余裕がないためです。指示が届くのは、始動の前とプレーが切れた直後です。覚えていないことを責めるより、「どのタイミングで言われた?」と場面を手がかりに聞くと思い出しやすくなります。家で絞る1個も、始動前やプレーの切れ目で使えるものを選んでください。

「今日どうだった?」と聞いても「ふつう」しか返ってきません。

質問の範囲が広すぎます。「今日、コーチに言われたこと1個教えて」のように範囲を限定すると答えが出ます。順番は「①言われたこと→②やってみた感想→③次の1個」の3段で、合計3分で終わる長さにしてください。練習直後は疲れて言葉が出にくいので、帰り道で1問目だけ、夕食後や風呂上がりに残りを聞くと出やすくなります。答えられなかった時に責めないことが、次回も答えてもらうための条件です。

何度も同じことで注意されています。コーチに相談したほうがいいですか?

まず家で「1個だけ持ち帰って1回試す」を2週間試してください。同じ注意が続く多くのケースは、指示が持ち帰られず修正サイクルが1周も回っていないことが原因です。1周回れば「やってるな」と見てもらえて、次の課題に進めます。それでも変わらない場合や、指示の内容自体が子どもに理解できていない疑いがある場合は、コーチに「家では何を1つやらせるといいですか」と聞くのが最も具体的です。評価や指導方針への意見ではなく、家でやることの確認として相談してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。