テニスは、試合が始まればコートの中で頼れるのは自分だけという競技です。だから家庭でやるべきことは、打ち方を教えることではありません。「1人で立て直す力」と「安心して帰れる場所」を育てることが、親の最大のサポートです。この記事では、ジュニアテニスを頑張る子を支える親の関わり方を、用具・送迎・大会の基礎から、コートの外での距離の取り方、試合の応援マナーまで、OK/NGの声かけ例つきで整理します。
市大会・県大会で勝ち、全国を目指す子ほど、親が「良かれと思って」かけた一言がプレッシャーになりがちです。まずは結論から見ていきましょう。
結論:テニスは「1人で立て直す力」を家庭で育てる
テニスがサッカーや野球と大きく違うのは、次の3つです。この特性を知ると、親がやるべきことがはっきりします。
- 試合中はコーチも親も助けられない:多くのジュニアの試合で、プレー中のアドバイスは認められていません。
- 審判がいない(セルフジャッジ):自分でイン・アウトを判定し、フェアさと感情のコントロールが求められます。
- 勝敗がすべて自分に返ってくる:逃げ場がないぶん、崩れたときに自分で立て直す力が勝負を分けます。
つまりテニスで伸びる子は、ミスや不利な流れを自分で切り替えられる子です。その力は、試合中に親が口出しするほど育ちません。家庭での親の役割は、次の3つに絞ると考えるとうまくいきます。
- ① 心の安全基地になる(勝っても負けても変わらず迎える)
- ② 環境を整える(用具・送迎・費用・体調管理)
- ③ 見守る距離を守る(技術はコーチに任せる)
ジュニアテニスの親のサポート(用具・送迎・大会・費用)
まずは、親にしかできない「環境づくり」から。ここが整っていると、子どもは競技に集中できます。
用具は「レベルと体格」に合わせて相談して選ぶ
ラケットは、見栄えや価格ではなく体格・筋力・レベルで選びます。重すぎるラケットはフォームを崩し、ケガの原因にもなります。ガット(ストリング)の張り替え、グリップテープ、シューズの消耗は見落としがちなので、コーチに相談しながら定期的に点検しましょう。
「そろそろシューズすり減ってきたね。次のを一緒に選ぼうか」と、子どもの感覚も聞きながら準備する。
「プロと同じ高いラケットにすれば上手くなる」と、体格に合わない上級者向けを与える。
送迎・遠征・大会エントリーを支える
スクールやクラブへの送迎、遠征の付き添い、大会エントリーの管理は、小学生のうちは親のサポートが欠かせません。県ジュニアや地区大会のスケジュールは各都道府県テニス協会のサイトで確認できます。ただし「エントリーは親、目標を決めるのは本人」という線引きを意識すると、主体性が育ちます。
費用は「無理のない範囲」で、家庭で線を引く
テニスはスクール月謝に加え、用具・大会参加費・遠征費がかかる競技です。家計が苦しくなるほどの出費は、かえって「これだけ払っているのに」というプレッシャーを生みます。壁打ちや素振りなど無料でできる練習も活用し、無理のない範囲で支えるのが長続きのコツです。
- ラケット・シューズ・ガットの状態を今週チェックする
- 次の大会エントリー締切をカレンダーに登録する
- 1か月のテニス費用をざっくり把握し、家庭の上限を決める
コートに親は入れない|自分で立て直す力の育て方
テニスの試合で、親はコートの中に入れません。だからこそ、「自分で考えて、自分で立て直す」練習を日常でしておくことが、本番の強さに直結します。
試合中の指示をやめ、「どうする?」を家庭で習慣に
経験者の親ほど、コート脇から「フォアで打て」「前に詰めろ」と言いたくなります。しかし試合中のコーチングは反則になることが多く、何より子どもが自分で判断する機会を奪います。家庭では答えを与えるより、「今日はどんな作戦でいく?」と問いかける形に変えましょう。
「自分で考えて打った1本、よかったね。次はどうしたい?」と、本人の判断を認めて問い返す。
コート脇から「そこ! フォア! 前!」と、プレー中に大声で指示を飛ばす。
セルフジャッジは「フェアさ」を家庭で支える
ジュニアの試合の多くはセルフジャッジで、自分でイン・アウトを判定します。際どい球は相手に有利に取るのが基本マナーです。親が「今のアウトだったでしょ!?」と言ってしまうと、子どもは判定を巡って感情的になりやすくなります。フェアにジャッジできたこと自体を、家で評価してあげましょう。
「際どい球をフェアに返せてたね。ああいうのが本当に強い選手だよ」とフェアプレーをほめる。
「あれは絶対イン! 相手がずるい」と、親が判定に不満をぶつける。
感情のコントロールは「切り替え方」を一緒に決める
ミスが続くとイライラしてラケットを叩く、下を向く——これはメンタルが弱いのではなく、切り替える方法をまだ知らないだけです。「ポイントの間に深呼吸してガットを整える」など、自分だけのリセット動作を一緒に決めておくと、本番でも立て直しやすくなります。
スポーツ心理学では、「自分でできた」という有能感と、「自分で決めている」という自律性が、粘り強さや意欲を高めるとされています(自己決定理論)。親が口を出しすぎると、この2つがどちらも育ちにくくなる点に注意しましょう。
コーチに任せる線引きと家庭の役割
「どこまで親が関わり、どこからコーチに任せるか」。この線引きが、子どもの伸びと親子関係を大きく左右します。日本スポーツ協会も、保護者の役割は技術指導ではなく生活面と精神面のサポートだと位置づけています。
基本の考え方はシンプルです。技術・戦術はコーチ、生活と心のケアは家庭。下のリストを目安にすると迷いません。
- コーチに任せる:打ち方、フォーム修正、戦術、練習メニュー、試合の技術的な評価
- 家庭でやる:睡眠・食事・体調管理、送迎、気持ちの受け止め、フェアプレーやマナー、費用
親が経験者でも、コーチの指導を家庭で上書きしないことが大切です。2人の大人が違うことを言うと、子どもは混乱し、どちらも信じられなくなります。気になる点があれば、子どもの前ではなく、コーチと直接話しましょう。
「コーチは今日どんなこと言ってた? なるほどね」と、コーチの指導に沿って会話する。
「コーチはああ言うけど、お父さんはこう打つべきだと思う」と、指導内容を家で否定する。
- 技術の話は「コーチは何て言ってた?」で受ける習慣にする
- コーチに聞きたいことは、子どもを介さず直接連絡する
OK/NGで学ぶ|試合の応援と試合後の声かけ
最後は、親の関わりが最も表に出る「応援」と「試合後」の場面です。ここでの一言で、子どもの表情は大きく変わります。
観戦中は「静かな応援」が基本
ジュニアテニスでは、保護者の大声の指示や相手選手への野次が問題になりがちです。本人の集中を切らさないためにも、応援は拍手とうなずきを基本に。「カモン!」の連呼や、相手のミスを喜ぶ声は控えましょう。観戦マナーの詳細は関連記事も参考になります。
ナイスプレーに拍手し、ミスのときは黙ってうなずく。表情で「見ているよ」を伝える。
ポイントごとに「集中しろ!」「何やってるの!」と声を張り上げ、相手のミスに歓声を上げる。
試合後の第一声は「結果」より「ねぎらい」
試合直後の子どもは、勝っても負けても気持ちがいっぱいです。いきなり技術のダメ出しをすると、「テニス=怒られるもの」になってしまいます。まずはねぎらい、感想は本人が話し出すのを待ちましょう。
「おつかれさま。暑い中よく戦ったね。どんな試合だった?」と、まずねぎらってから本人に委ねる。
車に乗るなり「なんであそこで打ちにいったの」「サーブが悪い」と、反省会を始める。
スポーツ庁の「体力・運動能力、運動習慣等調査」でも、「運動やスポーツが好き」という気持ちが、続ける力につながることが示されています。勝ち負け以上に「テニスが好き」を守ることが、結局は上達の近道です。
- 試合後の第一声を「おつかれさま」に固定する
- 技術の話は、本人が落ち着いてから、または次の練習でコーチと
あわせて読みたい
親がテニス経験者です。技術を教えてもいいですか?
クラブやスクールでコーチに習っているなら、家庭での細かい技術指導は控えるのがおすすめです。コーチと家庭で言うことが食い違うと子どもが混乱します。経験を活かすなら、技術指導ではなく、一緒に壁打ちを楽しむ・体調を整える・気持ちを聞くといった関わり方が効果的です。
試合中、応援でアドバイスを伝えてもいいですか?
多くのジュニアの試合では、プレー中のコーチングは反則になります。また、指示に頼る癖がつくと「自分で立て直す力」が育ちません。試合中は拍手とうなずきにとどめ、作戦の相談は試合前や練習のときにしましょう。
セルフジャッジで相手の判定に納得できない様子です。どう声をかければいいですか?
まずは「フェアにジャッジできていたね」と、本人の姿勢を認めましょう。際どい球は相手に有利に取るのが基本マナーです。親が判定に不満を言うと、子どもも判定を巡って感情的になりやすくなります。勝敗より、フェアに戦えたことを評価してあげてください。
練習を嫌がるようになりました。やめさせるべきでしょうか?
すぐに結論を出す必要はありません。疲労やスランプ、コーチや友人との関係など、背景はさまざまです。まずは「最近どう?」と気持ちを聞き、必要ならコーチにも様子を相談しましょう。『好き』という気持ちが戻れば、また前を向けることが多いです。休むこともサポートの一つです。
ラケットはどう選べばいいですか?
価格や見た目ではなく、体格・筋力・レベルに合った重さ・グリップサイズで選ぶのが基本です。重すぎるラケットはフォームを崩しケガの原因にもなります。迷ったらコーチに相談し、成長に合わせて見直しましょう。ガットやグリップ、シューズの消耗も定期的に点検してください。
テニスの費用はどのくらい覚悟すればいいですか?
スクール月謝に加え、用具・大会参加費・遠征費がかかります。金額は環境により幅がありますが、大切なのは家庭で無理のない上限を決めることです。壁打ちや素振りなど無料でできる練習も活用しましょう。『これだけ払っているのに』という空気は、子どもの負担になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。



