結論から言います。小学生の持久力をつける方法は「走り込み」ではありません。学童期の持久力は、①心肺の土台を「遊びと短い走り」で広げる、②後半に動けない原因(燃料・鉄・フォーム)を先に取り除く、③週3回・1回5〜10分の積み上げを続ける。この3つで伸びます。
「後半になると足が止まる」「練習では走れるのに大会で失速する」。秋冬の持久走大会や駅伝が近づくと、そんな相談が増えます。でも、走る量を増やしても解決しないことが多いのです。この記事では、持久力が伸びない原因を4つに切り分け、学年別の週3メニューと、親が家でできる声かけまでをまとめます。
まず結論|学童期の持久力は「走り込み」では伸びにくい
大人のランナーは、走る距離を増やせば心肺機能が上がります。ところが小学生は違います。
小児運動生理学の研究(Rowlandらの一連の報告)によると、思春期前の子どもは持久的トレーニングを行っても、最大酸素摂取量(持久力の指標)の伸びが成人より小さいとされています。体がまだ「成長で勝手に伸びている段階」だからです。心臓も肺も、身長や体重と一緒に大きくなっていきます。
つまり学童期は、走り込みで無理に心肺を鍛える時期ではなく、「後半に動けない原因を取り除く」「走る技術と習慣を作る」時期です。ここを間違えると、量だけ増えてケガや走り嫌いにつながります。
日本陸上競技連盟の「小学生の長距離・持久走についてのガイドライン」でも、練習頻度は週2〜3日、1日の総走行距離は5km以下、持久力向上の運動処方として「5分間走」を推奨しています。長距離練習に偏らず、いろいろな動きでオールラウンドな体力を育てることが明記されています。
後半に動けない原因を4つに切り分ける|心肺・燃料・鉄・フォーム
「スタミナがない」と一言で片づける前に、原因を分けてみてください。対処がまったく違います。
| 原因 | よく見えるサイン | 家でできる確認 |
|---|---|---|
| ① 心肺(土台不足) | 序盤から息が荒い。歩いたり止まったりする | 会話できる速さで5分走れるか |
| ② 燃料(エネルギー不足) | 朝練や午後の後半だけ急に動けない。顔色が白い | 朝食を抜いていないか。練習前の補食があるか |
| ③ 鉄(貧血気味) | 以前より明らかに持たない。だるい・あくびが多い・顔色が悪い | 食事に肉・魚・卵があるか。成長期・女子・急に練習量が増えた |
| ④ フォーム(技術の消耗) | 前半は速い。後半に腕が上がり、肩が上がる | 動画で前半と後半の姿勢を比べる |
お子さんはどれに近いでしょうか。複数が重なることもあります。順番としては、②燃料と③鉄を先に確認してください。ここが欠けていると、どんな練習をしても持久力は上がりません。
学童期の体の特徴|持久力が伸びる時期と伸びにくい時期
子どもの発育には順番があります。神経系は小学校低学年までにほぼ完成し、心肺や筋肉は思春期(身長が一気に伸びる時期)以降に大きく伸びます。
この順番から見ると、学童期にやるべきことは明確です。
- 低学年(1〜2年):走る・跳ぶ・止まる・方向を変える。いろいろな動きを「遊び」で経験する時期
- 中学年(3〜4年):同じペースで走る感覚、呼吸のコントロールを覚える時期
- 高学年(5〜6年):身長が伸び始める子は心肺が伸びやすい。ただし個人差が最も大きい時期
高学年で注意したいのが「成長の早い子と遅い子の差」です。同じ学年でも、体の発育には2年以上の差があります。身長がまだ伸びていない子が、伸びた子と同じ練習量をこなすと、疲労ばかりが溜まります。記録の差は努力の差ではなく、発育のタイミングの差であることが多いのです。
学年別の週3メニュー|低学年・中学年・高学年
チーム練習とは別に、家庭で足せる「持久力の土台づくり」のメニューです。合計時間は1回15〜25分。チーム練習がある日は、無理に重ねないでください。
低学年(1〜2年)|「走る遊び」を週3回
- 鬼ごっこ・だるまさんがころんだ・ボール追いかけ(10〜15分)
- 「おしゃべりジョグ」:会話しながら3〜5分走る。歩いてもOK
- 目標は時間でも距離でもなく「息が上がっても笑っていられるか」
低学年にペース走やタイム測定は不要です。鬼ごっこは、加速・減速・方向転換を自然に繰り返す、この年代で最も効率のいい持久トレーニングです。
中学年(3〜4年)|5分間走を「同じペース」で
- 5分間走×1〜2本(間に3分歩く)。「最初から最後まで同じ速さ」が課題
- 週1回は坂道や芝生で「走り方を変える日」(10分程度)
- 週1回は走らずに縄跳び・片足バランスなど、体を支える練習
日本陸連が5分間走を勧める理由は、心肺への負担が短時間で済み、フォームが崩れにくいからです。中学年の目標は「速く走る」ではなく「崩れずに走り切る」です。
高学年(5〜6年)|10分走と「後半の確認」
- 8〜10分走×1本。前半と後半で1周のタイムがどれだけ変わるかを確認
- 週1回は「5分走+3分歩き」を2セット。きつい日はこちらに切り替える
- 週1回は体幹・股関節のトレーニング(走らない日)
高学年でも、1日の走行距離は合計5km以下を守ります。チーム練習で既に走っている日は、家庭での追加は不要です。「今日どれくらい走ったの?」と聞いて、合計を把握するだけで十分です。
走る前に直すと変わること|呼吸・腕振り・接地のチェック
後半に失速する子の多くは、心肺より先に「フォームの消耗」で止まります。走る量を増やす前に、次の3点を見てください。
- 呼吸:苦しくなると「吸おう」とします。でも大事なのは「吐く」こと。「フーッと長く吐いてみよう」の一言で、呼吸が落ち着く子は多いです
- 腕振り:後半に肩が上がり、腕が前で小さく振れていたら疲労のサイン。「ひじを後ろに引く」だけ意識させます
- 接地:かかとで強く着地し、ペタペタ音がする子は、着地のたびにブレーキがかかっています。音が小さくなる走り方を一緒に探してみてください
これらはスマホで前半と後半の動画を10秒ずつ撮れば、親でも比べられます。「後半は肩が上がってるね」と事実を見せるだけで、子どもは自分で修正し始めます。
燃料の問題かもしれない|朝食・補食と持久力の関係
「午後の練習の後半だけ動けない」「朝練で力が出ない」なら、心肺ではなく燃料切れを疑ってください。
小学生の体は、大人より糖(グリコーゲン)の貯蔵量が少なく、使い切るのが早いとされています。朝食を抜いた日、昼食から練習まで5時間以上空いた日は、どれだけ練習しても「ガス欠で止まる」だけです。そしてそれが「持久力がない」と誤解されます。
- 朝食:ごはんやパンに、卵・納豆・牛乳などたんぱく質を1品足す
- 練習前の補食:練習1〜2時間前におにぎり1個・バナナ1本など、消化しやすい炭水化物
- 練習後30分以内:牛乳・ヨーグルト・おにぎりなどで回復を早める
鉄についても触れておきます。日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、鉄の推奨量は10〜11歳で男女とも1日8.5mg、月経が始まった女子は12.0mgです。成長期は血液量が増え、汗からも鉄が失われるため、スポーツをする子は不足しやすい栄養素です。「以前より明らかに持たなくなった」「顔色が悪い」「あくびが増えた」が重なるなら、食事の見直しとともに、小児科で血液検査を受ける選択肢も持っておいてください。
やりすぎのサイン5つ|疲労骨折・貧血・オーバートレーニング
持久力をつけたい気持ちが強いほど、親はつい「もう少し」と足したくなります。ですが学童期は、骨の端(成長軟骨)がまだ柔らかく、繰り返しの衝撃に弱い時期です。次のサインが1つでもあれば、まず量を減らしてください。
- かかと・すね・膝下の痛みを「走ると痛い、休むと治る」と繰り返す(かかとの骨端症やシンスプリントの初期。放置すると疲労骨折へ)
- 朝起きられない・寝ても疲れが抜けないが2週間以上続く
- 記録が落ち続けるのに、練習は休んでいない
- 食欲が落ちた・体重が減った
- 「走りたくない」と言う頻度が増えた(心のサインは、体より先に出ることがあります)
睡眠も持久力の一部です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生に9〜12時間の睡眠を推奨しています。練習時間を増やして睡眠を削るのは、持久力を「下げる」行為です。
持久走大会・駅伝の2週間前からの調整
大会直前に走る量を増やしても、持久力は上がりません。むしろ疲労が残ります。2週間前からの考え方はシンプルです。
- 2週間前〜1週間前:本番と同じ距離・同じペースで走る日を1回だけ作る。残りは5分走や遊びでつなぐ
- 1週間前〜前日:走る量を半分以下に。睡眠と朝食を整える週にする
- 前日:10分の軽いジョグか、完全休養
大会直前の4週間メニューや、当日のペース配分・持ち物については、別記事で詳しくまとめています。この記事は「大会に向けた土台づくり」までを扱います。
場面別OK/NG声かけ例|練習がきつい日・記録が出ない日
持久力は「体」の話に見えますが、続けられるかどうかは親の言葉で決まります。場面ごとにまとめます。
練習がきつかった日
- OK:「今日はきつかったね。何周目から重くなった?」(事実を聞く→本人が後半の感覚を言葉にできる)
- OK:「最後まで同じペースで行けた?」(速さではなく「崩れなかったか」を評価軸にする)
- NG:「気持ちで走れ」「根性が足りない」(原因が燃料や鉄なら、精神論は何も解決しない)
- NG:「もっと走り込め」(学童期は量より原因の切り分け。ケガと走り嫌いにつながる)
記録が出なかった日
- OK:「前半と後半、どっちがきつかった?」(失速の場所を特定すると、次に試すことが1つに絞れる)
- OK:「タイムは後で見よう。今日は腕、後ろに引けてたよ」(タイム以外の達成を1つ拾う)
- NG:「〇〇くんはもっと速かったよ」(発育の差を努力の差と誤解させる)
- NG:「なんで後半止まるの?」(本人も分からない。問い詰めは言葉を閉じさせる)
「走りたくない」と言った日
- OK:「今日は歩きでいいよ。5分だけ一緒に出よう」(ゼロにせず、ハードルを下げる)
- OK:「体が疲れてる? 気持ちが疲れてる?」(やりすぎのサインかもしれない。聞いて見極める)
- NG:「サボるな」「決めたことでしょ」(走ることと叱責が結びつくと、持久力より先に意欲が消える)
今日からできる3つの行動
- 原因を1つ決める:上の表で、お子さんが「心肺・燃料・鉄・フォーム」のどれに近いか、今日の練習の様子から1つ選ぶ
- 朝食にたんぱく質を1品足す:明日の朝から。卵1個か納豆1パックでいい
- 次の練習で後半を10秒撮る:前半と比べて、肩と腕の位置だけ見る。本人に見せて「どう思う?」と聞く
まとめ|持久力は「量」ではなく「原因」と「積み上げ」で伸びる
小学生の持久力をつける方法は、走り込みではありません。後半に動けない原因を心肺・燃料・鉄・フォームに切り分け、取り除けるものから取り除く。そのうえで、週3回・5〜10分の「崩れずに走る」練習を積み上げる。それだけで、秋冬の持久走大会や駅伝で、後半に動ける体に近づきます。
そして、続けられるかどうかは親の一言で決まります。「気持ちで走れ」ではなく「何周目から重かった?」。この言い換えが、子どもの持久力を一番長く支えます。
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よくある質問
小学生の持久力をつけるには毎日走らせたほうがいいですか?
毎日は必要ありません。日本陸上競技連盟のガイドラインでは、小学生の練習頻度は週2〜3日、1日の総走行距離は5km以下が目安とされています。学童期の持久力は量より「崩れずに走る習慣」と「後半に動けない原因の除去」で伸びます。チーム練習がある日は家庭での追加は不要です。
後半に失速するのは、やはりスタミナ不足でしょうか?
必ずしもそうではありません。朝食抜きや練習前の補食不足による燃料切れ、成長期の鉄不足、後半のフォームの崩れでも同じように失速します。「序盤から息が荒い」なら心肺、「午後の後半だけ急に動けない」なら燃料、「以前より明らかに持たなくなった・顔色が悪い」なら鉄を疑ってください。原因によって対処が変わります。
家で持久力をつけるメニューは何分くらいが目安ですか?
1回15〜25分、週3回で十分です。低学年は鬼ごっこなどの走る遊び、中学年は同じペースで走る5分間走、高学年は8〜10分走と前半・後半の比較が目安です。走らない日に縄跳びや体幹トレーニングを入れると、走る技術の土台になります。
持久走大会の直前に走る量を増やしても効果はありますか?
直前の増量は逆効果になりやすいです。持久力は2週間で急に伸びないうえ、疲労が残って本番で動けなくなります。2週間前に本番と同じ距離・ペースで走る日を1回だけ作り、1週間前からは走る量を半分以下にして睡眠と朝食を整えてください。
持久力をつけたいのですが、子どもが「走りたくない」と言います。
まず「体が疲れてる?気持ちが疲れてる?」と聞いて、やりすぎのサインかどうかを見極めてください。問題がなければ「今日は歩きでいいよ。5分だけ一緒に出よう」とハードルを下げるのが有効です。「サボるな」と叱ると走ることと叱責が結びつき、持久力より先に意欲が消えてしまいます。
鉄不足かどうかは家で判断できますか?
家で確定はできませんが、「以前より明らかに持たない」「顔色が悪い」「あくびやだるさが増えた」が重なる場合は疑いが強まります。日本人の食事摂取基準(2020年版)では10〜11歳の鉄の推奨量は男女とも1日8.5mg、月経が始まった女子は12.0mgです。肉・魚・卵を毎食に入れつつ、気になる場合は小児科で血液検査を受けてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。



