ページを選択

小学生が足が速くなる方法|家でできる練習と運動会までの4週間【OK/NG声かけ例】

2026/08/24 | 身体づくり・コンディション

小学生が足が速くなる方法は、①スタートの5歩 ②腕振りと姿勢 ③接地、この3つに絞ることです。フォームを一度に全部直させないことが、家庭で伸ばす最大のコツになります。

運動会が近づくと、多くの家庭で同じ会話が起きます。「もっと腕を振って」「膝を上げて」「背筋伸ばして」。そして、言われた子のフォームは、なぜかその場でバラバラになります。

これは、お子さんの運動神経の問題ではありません。人間は、一度に2つ以上の動作を意識すると必ず動きが硬くなるからです。市大会・県大会で戦うレベルの子でも、これは同じです。

この記事では、小学生の走りを3つの要素に分解し、家庭で週3回・1回15分でできる練習と、運動会までの4週間プランを具体的に示します。あわせて、親がやりがちなNGの教え方と、そのまま使えるOK声かけ例も載せました。

【結論】小学生が足が速くなる方法は「3つ」に絞る

走る速さは、次の式で決まります。

走る速さ = ストライド(歩幅)× ピッチ(脚の回転数)

小学生の場合、この2つを同時に伸ばそうとすると、たいてい両方が崩れます。そこで、家庭で扱う項目を3つに絞ります。

  1. スタート|最初の5歩。50m走では順位の半分がここで決まります。
  2. 姿勢と腕振り|地面を押した力を、前に進む力に変える土台です。
  3. 接地|かかとから着くか、足の前側で着くか。ブレーキの有無が変わります。

そして、この3つを「1回の練習で1つだけ」扱うのが鉄則です。今日は腕、明日はスタート。これだけで、子どもの動きは驚くほど素直になります。

小学生の「速さ」は才能より技術で変わる理由

「うちは親が遅いから」と言う保護者の方は多いです。しかし小学生の年代に関しては、遺伝より先に手をつけるべき要素が残っています。

神経系は12歳ごろまでにほぼ完成する

発育発達の分野で広く使われるスキャモンの発育曲線によると、神経型(脳・神経系)は5歳ごろまでに成人の約80%、12歳ごろまでにほぼ100%に達するとされています。筋肉や心肺が伸びるのは、そのあとです。

つまり小学生の時期は、「筋力で速くなる時期」ではなく「動きの覚え方が最も速い時期」です。フォームの改善が最も効率よくタイムに変わる年代だ、ということになります。

運動時間が長い子ほど、体力の数値は高い

スポーツ庁の「令和5年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、1週間の総運動時間(体育の授業を除く)が420分以上の小学5年生の体力合計点は、男子56.8点/女子59.2点。これに対し、60分未満の子は男子43.4点/女子48.8点でした。全国平均は男子52.6点/女子54.3点です。

週420分は、1日あたり約60分。特別な練習である必要はありません。「毎日1時間、体を動かしている」状態そのものが、走力の土台になっているということです。

逆に言えば、週末だけ30分フォーム練習をしても土台は変わりません。家庭でやることは、①短時間の技術練習 ②平日の遊びの量、この2階建てで考えてください。

あわせて読みたい
・陸上・かけっこを頑張る子の親|記録を伸ばす声かけとサポート
・小学生の体幹トレーニングは家でできる|学年別メニューと続けさせる親の声かけ
・子供のスポーツとストレッチ|ケガ予防と柔軟性を育てる夜5分の親子習慣

要素①スタート|最初の5歩で順位の半分が決まる

50m走のうち、加速に使えるのは前半20mほど。ここで前に出られなかった子は、後半で抜き返すのがとても難しくなります。

よくある失敗は「上に立ち上がる」スタート

「よーい、ドン」の合図で、まず体を起こしてから走り出す子。これがいちばん多い失敗です。上に伸び上がった分のエネルギーと時間が、前進に使われていません。

理想は、低い姿勢のまま前に倒れ込み、その倒れを脚で受け止める形です。最初の3〜5歩は、頭が肩より前にある状態がつくれていれば合格です。

家でできる「倒れ込みスタート」

  • 足をそろえて立ち、体をまっすぐのまま前に傾けていく
  • 「もう倒れる」という限界まで我慢する
  • 倒れる瞬間に走り出す(5〜10mでOK)

この練習の良いところは、親が何も指示しなくても、勝手に前傾姿勢になることです。「前傾しなさい」と言うより、はるかに速く身につきます。

要素②姿勢と腕振り|親が見るべき3つのチェックポイント

走りの推進力は、地面を押した反発で生まれます。姿勢が崩れていると、その力が逃げてしまいます。まずは次の3点だけを見てください。

見るところOKの状態崩れているサイン
頭とお腹の位置耳・肩・腰が一直線あごが上がる/腰が落ちて「くの字」
ひじの角度約90度をキープ走るうちに腕が伸びてくる
腕を引く方向後ろに引ける前に振るだけ/体の前で横に交差する

とくに見落とされがちなのが3つ目の「後ろに引く」です。子どもは「腕を振れ」と言われると、前に押し出す動きになります。前に出した腕は推進力になりません。

声をかけるなら「振って」ではなく、「ひじを後ろのポケットに当てるように」。動作のイメージを1つの言葉で渡すのがコツです。

なお、姿勢を保つには体幹の力が要ります。走りの練習と並行して、短時間の体幹づくりを入れると崩れにくくなります。

要素③接地|かかと着地が「ブレーキ」になる

速く走れない子の多くは、かかとから地面に着いています。これは歩くときの足の運びで、走りに使うと一歩ごとにブレーキがかかります。

目指すのは、足の前側(前足部)でリズムよく地面をとらえ、反発をもらって前に進む接地です。判断は簡単で、足音を聞けばわかります。

  • 「ドタドタ」「ペタペタ」と重い音 → かかと着地の可能性が高い
  • 「タッタッタッ」と軽く速い音 → 前足部でとらえられている

ただし、ここで「つま先で走りなさい」と言うのは避けてください。つま先立ちで走る形になり、ふくらはぎを痛めやすくなります。

代わりに使うのが縄跳びです。縄跳びは、前足部での接地とピッチが自動的に身につく動き。とくに駆け足跳びは、走りのリズムそのものです。「つま先で」と言わずに接地を変えられます。

家でできる練習メニュー|週3回・1回15分

スポーツ少年団やクラブの練習がある日は無理に足しません。オフの日か、練習前の10〜15分に組み込むのが現実的です。

メニュー目安育つもの親が見る点
①その場もも上げ10秒×3ピッチかかとが床につかないか
②スキップ(腕を大きく)20m×3腕と脚の連動リズムが一定か
③縄跳び・駆け足跳び30秒×3前足部の接地足音が軽いか
④倒れ込みスタート10m×3スタートの5歩頭が上がっていないか
⑤全力ダッシュ20m×3(休憩30秒)最大スピード最後まで力が抜けないか

合計で15分ほどです。ポイントは3つあります。

  • 本数を増やさない。速く走る練習は、疲れた状態でやると遅いフォームを覚えます。
  • 休憩をしっかり取る。ダッシュの間は30秒以上。息が整ってから次を走らせます。
  • その日のテーマは1つだけ。「今日は腕」「今日はスタート」と決めて始めます。

練習後は5分でいいので、ふくらはぎと股関節まわりを伸ばしてから終わらせてください。前足部で接地する練習は、ふくらはぎに負荷がかかります。

芝生の上を走る小学生の女の子

運動会までの4週間プラン

「あと1か月」で仕上げる場合の並べ方です。順番に意味があります。技術 → スタート → スピード → 調整の流れです。

時期テーマやること
第1週自分の走りを知るスマホで横から走りを撮影。①〜③のメニューを軽く。修正は「腕」だけ。
第2週スタート倒れ込みスタートを毎回3〜5本。最初の5歩だけを見る。
第3週スピード20m〜30mの全力ダッシュを増やす(1回3〜5本まで)。フォームの注意は減らす。
第4週調整本数を半分に。3日前からは軽い流しのみ。前日は走らない。

第1週の撮影は、必ずやってください。言葉で10回言うより、自分の走りを1回見るほうが速く変わります。横から、全身が入るように、10mほど離れて撮るのがコツです。

第4週で最も大切なのは「やらない勇気」です。直前に走り込んで疲れを残した状態で本番を迎える子が、毎年たくさんいます。本番前3日は、体を軽くすることだけを考えてください。

親の教え方のNG|一度に2つ言うとフォームは必ず崩れる

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

「腕をもっと振って! 膝も上げて! 背中も丸まってる!」——親としては、気づいたことを全部伝えたい。気持ちはよくわかります。しかし子どもの脳は、複数の動作を同時に意識すると、まず全体のバランスを捨てます。

結果として、腕は大きくなったのに前に進まない、膝は上がったのに上下動が増えた、という状態になります。親から見れば「言ってもできない」。子どもから見れば「言われるほど走れなくなる」。ここで親子ともに疲れていきます。

避けたい教え方は、次の3つです。

  • 複数同時指示|「腕」「膝」「姿勢」を一度に言う
  • 否定形の指示|「かかとで着くな」は、かかとへの意識を強めます
  • 結果だけの評価|「何位だった?」から会話を始める

逆に効くのは、「動きが自然に出る課題」を渡す方法です。腕と脚のリズムを合わせたいならスキップ。前足部で接地させたいなら縄跳び。前傾させたいなら倒れ込みスタート。フォームを言葉で直させるのではなく、勝手にそうなる練習を選ぶわけです。

OK声かけ・NG声かけ早見表

そのまま使える形にしました。声のトーンより、「何を1つに絞るか」を意識してください。

場面NG声かけOK声かけ
練習を始めるとき「腕振って、膝上げて、背筋伸ばして」「今日は腕だけ。それだけでいいよ」
フォームが崩れたとき「走り方がめちゃくちゃ」「動画撮ったから、一緒に見てみよう」
タイムが伸びないとき「なんでそんなに遅いの」「今のスタート、5歩目まですごく良かった」
他の子と比べたくなったとき「〇〇くんはもっと速いのに」「先月の自分と比べて、どこが変わった?」
本番の直前「絶対1位取ってこいよ」「練習でやったこと、1個だけやってこよう」
思うような結果が出なかったとき「才能ないんだから仕方ないよ」「走り方はあとから覚えられる。まだ途中だよ」
やりたがらない日「やらないなら速くならないよ」「今日は縄跳び1分だけにしよう」

とくに効果が大きいのは4行目です。比較の相手を「他人」から「過去の自分」に置き換えるだけで、子どもの表情が変わります。順位は環境で決まりますが、自分の変化は必ず前に進むからです。

速くならない時期がある|発育タイミングの話

正しく練習しているのに、タイムが止まる時期があります。これは失敗ではありません。

身長が一気に伸びる時期(身長発育速度がピークになる時期)には、骨が先に伸び、筋肉と神経の連携が一時的に追いつかなくなります。手足が急に長くなった結果、それまでの感覚で走ると動きがぎこちなくなるのです。

この時期は、多くの場合1年ほどで整います。ここで「才能がない」と結論づけてしまうことが、最大の損失です。

また、小学生の学年順位は成長の早い・遅い(早熟・晩熟)に大きく左右されます。同じ小学5年生でも、体つきが中学生に近い子と、まだ低学年に近い子がいます。早く成長した子が上位に来やすいのは、能力差というより時間差です。

この時期にやるべきことは、順位を追うことではなく、正しい動きを覚えておくこと。体が追いついたときに、覚えた動きがそのまま結果に変わります。

停滞期に親が言うと効く言葉は、シンプルです。「今は体が作り直されてる時期。動きは残ってるから大丈夫」。理由を添えて伝えると、子どもは驚くほど落ち着きます。

今日からできる3つの行動

  1. 横から10m離れて、走りを1本撮る。今日の記録が、4週間後の比較対象になります。
  2. 縄跳びの駆け足跳びを30秒×3本だけやる。接地とピッチが、指示ゼロで変わり始めます。
  3. 今週のテーマを1つだけ紙に書いて貼る。「今週は腕を後ろに引く」。それ以外は言わないと決めます。

3つ全部でも15分かかりません。足が速くなる方法で本当に難しいのは、練習の内容ではなく「言いすぎないこと」です。

参考・出典

  • スポーツ庁「令和5年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について」
  • スキャモンの発育発達曲線(神経型の発達に関する一般的知見)

小学生が足が速くなる方法|よくある質問

小学生の足が速くなるまで、どれくらいかかりますか?

フォームの変化そのものは数日で起きますが、それが走りに定着するまでには一般に4〜8週間かかります。運動会まで1か月あれば、スタートと接地の改善でタイム短縮が狙えます。逆に1週間しかない場合は、フォームを触らず「スタートの5歩」と「前日に走り込まない」の2点だけに絞ってください。

毎日練習させたほうが速くなりますか?

速く走る練習は、疲れた状態でやると遅いフォームを覚えてしまうため、毎日は逆効果になりやすいです。技術練習は週3回・1回15分で十分です。ただし、外遊びなど「体を動かす総量」は多いほうが有利です。スポーツ庁の令和5年度調査でも、1週間の総運動時間が420分以上の小学5年生は体力合計点が全国平均を大きく上回っています。

シューズを買い替えれば速くなりますか?

サイズが合っていない靴を履いている場合は、買い替えるだけで改善することがあります。目安は、つま先に5〜10mmの余裕があり、かかとがしっかり固定されること。一方で、高機能なモデルに替えれば速くなるわけではありません。小学生の場合は、機能より「軽さ」と「サイズの合致」を優先してください。

走り方教室に通わせたほうがいいですか?

通える環境があれば有効です。第三者が走りを見てくれること、親が教えなくて済むこと、この2点に価値があります。ただし通わなくても、この記事のメニューで基本の3要素は改善できます。判断基準は「家で教えると親子げんかになるかどうか」。なるなら、外に任せたほうが結果は出ます。

練習を嫌がるときはどうすればいいですか?

メニューを減らして、種目を「遊びに近いもの」に変えてください。縄跳び1分、鬼ごっこ、ケンケン競争でも走力の土台は育ちます。「やらないと速くならないよ」という声かけは、走ること自体を嫌いにさせます。嫌がる日は量を落とし、やる気が戻った日に戻すほうが、結果的に長く続きます。

運動会の直前は何をすればいいですか?

3日前からは全力走を減らし、軽い流し(8割程度の走り)を2〜3本にとどめます。前日は走らせず、睡眠を優先してください。当日の朝は、出番の30分前までに軽いジョグと足首・股関節を動かす体操を済ませておくと、スタートの1歩目が変わります。新しいことは一切足さないのが原則です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。