結論から言います。「試合に出たくない」と言われたら、その日は説得も許可もしないでください。まず理由を1つだけ聞き出す。判断はその後です。理由は大きく4タイプあり、タイプが違えば正解の声かけも真逆になります。
この記事では、4タイプの見分け方、休ませる・背中を押すの判断表、そして場面別のOK声かけ/NG声かけをそのまま使える形でまとめました。

「試合に出たくない」は逃げではなくサイン
市大会・県大会に出るレベルの子ほど、この言葉は突然出ます。昨日まで普通に練習に行っていた子が、大会の朝だけ動かなくなる。親としては焦ります。
ただ、この言葉は「サボりたい」ではないことがほとんどです。子供は自分の中の不安をうまく言語化できません。だから、いちばん短い言葉で「出たくない」と言うのです。
スポーツ心理学では、試合への恐怖は「負けること」そのものより、負けたら何を失うと思っているかから生まれるとされています。期待を裏切る、居場所がなくなる、笑われる。その想像が体を固めます。つまり、失うと思い込んでいるものを特定できれば、恐怖は小さくできます。
最初の30秒でやることは1つだけ
その場で「出る/出ない」を決めようとしないでください。決着を急ぐと、子供は本当の理由を隠します。理由を言えば説得されると学習しているからです。
言うのはこの一言で十分です。
「出る・出ないは後で決めよう。まず理由だけ教えて」
結論を先送りにすると宣言することで、子供は安心して話せます。ここが全ての入り口です。
4つの理由タイプ|どれに当てはまるか見分ける質問
理由は次の4つに分かれます。聞き出す質問も添えました。
| タイプ | 中身 | 見分ける質問 |
|---|---|---|
| ①失敗が怖い | ミスで負ける・迷惑をかけるのが怖い | 「今日、一番いやなのは何が起きること?」 |
| ②レギュラー争いが苦しい | 比べられる、出番が短い、評価が怖い | 「試合そのものと、誰かに見られるの、どっちがいや?」 |
| ③体調・疲労 | 眠い、だるい、どこか痛い | 「体が重い感じはある? 痛いところは?」 |
| ④人間関係 | 仲間や指導者との関係が苦しい | 「行けば会う人の中で、いやな人はいる?」 |
質問は一度に1つ。畳みかけないでください。子供が黙ったら10秒待つ。この10秒で答えが出ることは本当に多いです。
また、答えが「わからない」でも問題ありません。その場合は③体調から確認してください。体が先に限界を伝えているケースが一定数あります。
タイプ①失敗が怖い子への声かけ|結果の重さを下げる
いちばん多いのがこのタイプです。前の試合でミスをした、自分のせいで負けたと思っている。責任感が強い子ほどこうなります。
この子に必要なのは、励ましではありません。その1試合の重さを下げることです。
OK声かけ例
- 「ミスしても、今日は誰も人生変わらないよ」
- 「今日は勝ちにいかなくていい。1回だけ思い切りやる場面を作ろう」
- 「あのミス、お父さんはもう覚えてない。覚えてるのは走ってたことだけ」
- 「うまくいかなかったら、帰りにその話を聞かせて」
NG声かけ例
- 「大丈夫、絶対できる!」→ 根拠がないので逆に不安が増します
- 「せっかく練習したのに」→ 練習が人質になり、余計に出られなくなります
- 「みんな出てるんだから」→ 比較は恐怖を増やすだけです
- 「前のミスは忘れなさい」→ 忘れようとするほどミスの映像は鮮明になります
最後の項目は重要です。人は「ミスをしないでおこう」と思うほど、脳内にミスの映像が浮かびます。だから「〜しない」ではなく「〜する」で言い換えるのが鉄則です。「エラーしない」ではなく「一歩前に出る」。この言い換えを親子で1つ決めてから会場に向かってください。
タイプ②レギュラー争いが苦しい子への声かけ
出番が短い、途中で交代させられる、他の子と比べられる。この状況が続くと、子供は「出ない」ことで自分を守ろうとします。出なければ負けの実感もないからです。
ここで親が「レギュラー取れるよ」と言うのは逆効果です。評価の土俵に子供を戻してしまいます。
OK声かけ例
- 「今日は5分でも出られたら、その5分で何する?」
- 「出番の長さは監督が決める。中身は自分で決められるよ」
- 「今のチームで、あなたにしかできない役割って何だと思う?」
NG声かけ例
- 「◯◯くんは出てるのに」→ 一発で心が閉じます
- 「監督にアピールしなさい」→ 評価不安を強めます
- 「あの監督は見る目がない」→ 親が指導者を否定すると、子供は努力の意味を失います
この時期は「出場時間」ではなく「1試合の中の自分のテーマ」に評価軸を移してあげてください。テーマは子供に決めさせるのがコツです。
タイプ③体調・疲労が原因のとき|休ませる判断基準
「なんとなく行きたくない」の下に、疲労が隠れていることは珍しくありません。特に夏から秋にかけては大会が連続し、練習量も増えます。
スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(平成30年3月)によると、成長期の子供には週2日以上の休養日(平日1日以上・週末1日以上)を設け、1日の活動時間は平日2時間程度、休業日は3時間程度とすることが示されています。これはスポーツ医・科学の観点から、けが予防と適切な成長発達のために定められた基準です。
まず1週間を振り返ってください。休養日が2日未満なら、それは気持ちの問題ではなく回復不足です。
休ませる/背中を押すの判断表
| サイン | 判断 |
|---|---|
| 痛みがある/熱っぽい/食欲がない | 休ませる(迷わない) |
| 朝起きられない日が3日以上続く | 休ませる+練習量を見直す |
| この1週間、休養日が2日未満 | 休ませる |
| 体は元気。会場に着けば動けそう | 背中を押してよい |
| 不安を言葉にできて、少し笑えた | 背中を押してよい |
| 行くのを渋る日が2週間以上続く | 休ませて原因を一緒に探す |
休ませるときは、罰のように扱わないでください。「今日は回復の日」と言い切る。これで子供は罪悪感を持たずに休めます。
タイプ④人間関係が原因のとき|親が動く線引き
いちばん見えにくく、いちばん深刻化しやすいタイプです。子供は人間関係の悩みを最後まで隠します。親を心配させたくないからです。
親が動く/動かないの線引きは、シンプルに決めておきます。
- 子供同士のぶつかり合い:まず見守る。子供が解決する経験を奪わない
- 特定の子から繰り返し攻撃されている:親が指導者に伝える
- 体罰・暴言・無視が指導の中にある:即座に親が動く。子供の意思を待たない
指導者に伝えるときは、「うちの子が」ではなく「こういう場面がありました」と事実で伝えるとこじれにくくなります。
OK声かけ例/NG声かけ例
- OK「話してくれてありがとう。どうするかは一緒に考えよう」
- OK「あなたが我慢する必要はないよ」
- NG「気にしすぎだよ」→ 二度と話さなくなります
- NG「じゃあ辞めれば?」→ 逃げ道ではなく、突き放しに聞こえます

出ると決めた朝・終わった後の声かけ【時系列フレーズ集】
出場を決めた後の言葉も、結果を左右します。時系列で使い分けてください。
前夜
- OK「明日やることを1つだけ決めよう」
- NG「明日こそ頼むぞ」
当日の朝
- OK「行くって決めたの、けっこうすごいことだよ」
- OK「いやになったら、それも後で教えて」
- NG「緊張してる?大丈夫?」→ 不安に注意を向けさせます
会場に着いてから
- OK「見てるね」だけ言って離れる
- NG 直前の技術アドバイス(頭が真っ白になる原因になります)
試合直後
- OK「出たね。おつかれさま」(内容には触れない)
- NG「あそこ、なんで打たなかったの?」
帰り道〜その夜
- OK「朝はいやだったのに、行ってどうだった?」
- OK「次も同じ気持ちになったら、また教えて」
- NG「ほら、行ってよかったでしょ」→ 親の正しさの確認になり、次から言わなくなります
最後の項目は特に注意してください。「行ってよかったでしょ」は親の勝利宣言です。子供の中では、話したら押し切られたという記憶だけが残ります。
それでも「出たくない」と言い続けるとき
2週間以上続く場合は、声かけの問題ではありません。環境か、負荷か、心身の状態を見直す段階です。
やることは3つです。
- 一度きちんと休ませる。1〜2週間離れても競技力はほぼ落ちません
- 指導者と情報を共有する。家での様子を事実で伝える
- 「辞める」以外の選択肢を並べる。休会、種目変更、チーム変更、練習日数を減らす
子供が追い詰められるのは、選択肢が「続ける」か「辞める」の2択しかないときです。3つ目、4つ目を親が用意するだけで、子供は息をつけます。
今日からできる3つの行動
- 「出る・出ないは後で決めよう。まず理由だけ」を口ぐせにする
- この1週間の休養日を数える。2日未満なら休ませる
- 試合前の合言葉を「〜しない」から「〜する」に言い換える
「試合に出たくない」は、子供が親を信頼して出したサインです。すぐに解決しようとせず、まず受け取ってください。受け取ってもらえた子は、次も必ず話してくれます。
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よくある質問(FAQ)
「試合に出たくない」と言われたら、休ませてもいいですか?
痛み・発熱・食欲不振があるとき、この1週間の休養日が2日未満のときは休ませてください。体は元気で、不安を言葉にできて少し笑えたなら背中を押して構いません。判断に迷うときは休ませ、理由を一緒に探すほうが長期的には有利です。
理由を聞いても「わからない」と言います。どうすればいいですか?
まず体調から確認してください。「体が重い感じはある?」「痛いところは?」と具体的に聞きます。子供は感情を言語化できないだけで、疲労が原因のことが多いです。それでも出てこなければ、質問を1つに絞り、黙ったら10秒待ってください。
無理にでも出場させたほうが、強い子に育ちますか?
逆効果になりやすいです。理由を確認しないまま押し切ると、子供は「言っても無駄」と学習し、次からサインを出さなくなります。まず理由を受け取り、その上で本人が決めた出場は、押し切られた出場よりはるかに力になります。
何日続いたら深刻だと考えるべきですか?
2週間以上続く場合は、声かけの問題ではなく環境や負荷の問題と考えてください。一度きちんと休ませ、指導者と家での様子を共有し、「続ける/辞める」以外に休会・練習日数の削減・チーム変更といった選択肢を親が並べてあげてください。
試合当日の朝、直前にできる声かけはありますか?
「行くって決めたの、けっこうすごいことだよ」と決めたこと自体を認め、会場では「見てるね」とだけ言って離れてください。直前の技術アドバイスは頭が真っ白になる原因になるため避けます。合言葉は「ミスしない」ではなく「一歩前に出る」のように行動形にします。
兄弟や他の子と比べる言い方は、なぜダメなのですか?
「みんな出てるんだから」「◯◯くんは出てるのに」は、恐怖の正体である『他人の評価』をさらに強めるからです。子供は比較されると心を閉じ、本当の理由を話さなくなります。比べるなら他人ではなく、その子の先週の自分と比べてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。


