結論からお伝えします。仲間のミスを責める子は、「性格が悪い子」でも「やる気がない子」でもありません。勝ちたい気持ちのエネルギーの向け先を、間違えているだけです。親の役目は叱って止めることではなく、その向け先を変える手伝いをすることです。
試合中、味方のミスに「何やってんだよ!」と声を荒げる。ベンチで味方をにらむ。帰り道でチームメイトの文句を言う。見ている親としては、ヒヤヒヤしますよね。「このままでは嫌われてしまう」「コーチの評価も下がるのでは」と不安になるのは当然です。
この記事では、味方を責めてしまう理由、放置した場合のリスク、そして場面別のOK/NG声かけ例と家でできる「切り替え」の練習まで、具体的に解説します。
結論:責める子は「エネルギーの向け先」を間違えているだけ
まず前提を整理しましょう。味方のミスに腹が立つのは、本気で勝ちたいからです。どうでもいい試合なら、誰も怒りません。つまり、怒りの根っこにあるのは「本気さ」です。ここを否定してはいけません。
ただし、行動としての「責める」は放置できません。責める行為はチームの雰囲気を壊し、本人の立場も悪くします。親が持つべき軸はひとつです。
「勝ちたい気持ちはOK。仲間を責める行動はNG」。気持ちと行動を分けて伝えること。これがこの記事全体を貫く考え方です。「やめなさい」と行動だけを叱ると、子供は「本気になること自体がダメなんだ」と受け取ってしまいます。
なぜ味方のミスを責めてしまうのか|3つの背景
責める行動の背景は、大きく3つに分かれます。わが子がどのタイプかを見立てると、かける言葉が変わります。
① 本気で勝ちたいから(エネルギー過多型)
いちばん多いのがこのタイプです。勝利への執着が強く、理想のプレーが明確な子ほど、味方のミスが「許せないズレ」に見えます。エネルギー自体は才能です。向け先を変える練習をすれば、チームを引っ張る声に変わります。
② 自分への不安の裏返し(自己防衛型)
「負けたら自分のせいにされるかも」という不安が強い子は、先に他人のミスを指摘することで自分を守ろうとします。自分のミスを過剰に恐れている子に多いパターンです。この場合、責める行動だけを叱っても直りません。根っこの不安に手当てが必要です。
③ 大人の真似(学習型)
意外と見落とされがちなのがこれです。コーチがミスを大声で叱責するチーム、あるいは家庭内で「あの子のミスがなければ勝てたのに」という会話がある場合、子供は「ミスは責めていいもの」と学習します。子供の行動は、身近な大人の鏡です。
放置するとどうなる|3つのリスク
「勝気な証拠だから」と放置すると、次の3つのリスクが現実になります。
- チーム内で孤立する:責められた側は萎縮し、距離を置きます。パスが来なくなる、輪に入れなくなるなど、プレーにも影響します。
- キャプテンや選抜の候補から外れる:トレセンやセレクションでは、技術だけでなく仲間への態度も見られています。
- 自分のミスも許せなくなる:他人に向けた厳しさは、やがて自分に返ります。ミスを恐れて挑戦できない選手になってしまいます。
日本サッカー協会(JFA)は2008年から「リスペクトプロジェクト」を展開しており、リスペクトとは「大切に思うこと」、すなわち仲間・相手・審判を大切にすることがフェアプレーの土台だとしています。仲間への態度は、いまや競技団体レベルで重視される「選手の実力の一部」なのです。

場面別OK/NG声かけ例|試合直後・帰り道・翌日
声かけは「いつ言うか」で効果が大きく変わります。3つの場面に分けて見ていきましょう。
試合直後:正論は言わない
試合直後の子供は、感情でいっぱいです。ここで正論をぶつけても、一言も届きません。まずは態度に触れず、体を落ち着かせることに徹します。
NG声かけ例
- 「味方に怒るなんて最低だぞ」
- 「あの態度は何だ。みんな見てたぞ」
- 「〇〇くんに今すぐ謝りなさい」
OK声かけ例
- 「最後まで戦ったね。まず水分とろう」
- 「おつかれ。荷物持つよ」
- (何も言わず肩にポンと手を置く)
スポーツペアレンティングの考え方には、試合後24時間は重要な話をしない「24時間ルール」があります。興奮した感情のままぶつかり合わないための知恵です。態度の話は、落ち着いてからで十分間に合います。
帰り道:気持ちを言葉にしてあげる
少し落ち着いたら、まず「気持ち」の側を認めます。責める行動を裁く前に、怒りの根っこにある本気さを言語化してあげるのです。
NG声かけ例
- 「そんなんだから嫌われるんだよ」
- 「お前だってミスしてただろ」
- 「もうあのチームにいられないよ」
OK声かけ例
- 「勝ちたかったんだよね」
- 「怒っちゃうくらい、本気だったんだね」
- 「悔しさが仲間に向いちゃった感じかな」
「勝ちたかったんだよね」と言われた子は、自分でも整理できていなかった感情に名前がつき、少し冷静になれます。そのうえで初めて、「同じ場面で、チームが強くなる言い方って何かあるかな?」と問いかけができます。
『スポーツペアレンティング』(東洋館出版社)の監修者でスポーツジャーナリストの谷口輝世子さんによると、チームとして勝ちたいのなら、味方のミスを責める行為がチームにとってプラスかマイナスかを子供自身に考えさせる機会が必要であり、その気づきを与えることこそ親にできる関わり方だといいます。答えを教えるのではなく、考えさせる。ここがポイントです。
翌日:短く、前向きに締める
翌日、冷静な状態で1〜2分だけ話します。長い説教は逆効果です。
NG声かけ例
- 「昨日のこと、反省してるの?」と蒸し返して30分説教する
- 「今度やったらスポ少やめさせるからね」
OK声かけ例
- 「昨日の話、1個だけいい? 次に味方がミスしたら、何て言うか決めておこう」
- 「〇〇の本気は武器だよ。使い方だけ変えよう」
家でできる「切り替え」の練習|責める代わりの一言を3つ用意する
行動は「やめさせる」より「置き換える」ほうが定着します。責める言葉を我慢させるのではなく、代わりに出す言葉を先に決めておくのです。今日からできる行動は次の3つです。
- ① 「代わりの一言」を親子で3つ決める:例えば「ドンマイ、次!」「切り替えよう」「オレがカバーする」。子供自身に選ばせると使う確率が上がります。紙に書いて玄関に貼るのもおすすめです。
- ② 夕食で「今日、仲間にかけたいい言葉」を1つ聞く:責めなかった日ではなく、いい声を出せた日に光を当てます。
- ③ 親がテレビ観戦で「フォローする選手」を褒めて見せる:ミスした選手を責める解説ではなく、すぐカバーに走った選手を「今の動き、いいね」と口に出す。子供は親の視点を真似します。
ミスの後に出す言葉と行動をあらかじめ決めておくことは、選手自身の切り替えを速くする準備にもなります。「次の1プレーに戻る合図」を持っている子は、崩れにくいのです。
親自身がやりがちなNG|家庭が「ミスを責める文化」になっていないか
③のタイプ(大人の真似)で触れたとおり、子供の言動は家庭の会話を映します。心当たりがないか、一度だけ振り返ってみてください。
- 車の中で、チームメイトのミスを話題にしていないか(「あの子のミスがなければ勝てたね」)
- 子供自身のミスを、試合直後に指摘していないか
- きょうだいの失敗を笑ったり、比べたりしていないか
- テレビ観戦中に、選手や審判への文句を口にしていないか
ひとつでも当てはまったら、直すのは子供より先に親の側です。家庭の言葉が変わると、子供の言葉は驚くほど早く変わります。
子供が変わり始めたときのサイン
変化は劇的には起きません。次のような小さなサインを見逃さず、その場で短く認めてあげてください。
- ミスした味方に「ドンマイ」が出た
- 責めてしまった後、自分から謝れた
- ミスの後、下を向く時間が短くなった
- 帰り道の話題が「仲間の文句」から「自分の次の課題」に変わった
声をかけるなら「今の一言、チームを強くしたね」。責めなかったことではなく、チームに貢献したことを褒めるのが、次につながる言い方です。
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よくある質問(FAQ)
何度注意しても直りません。性格の問題でしょうか?
性格ではなく「習慣」の問題であることがほとんどです。注意(やめさせる)だけでは代わりの行動がないため戻ってしまいます。「次に味方がミスしたら何と言うか」を先に決めておく置き換え方式に切り替えると、変化が出やすくなります。数週間単位で見守りましょう。
責められた子の親に、こちらから謝るべきでしょうか?
試合中の一場面であれば、大げさにする必要はありません。ただし相手の子が明らかに傷ついている、繰り返し起きているという場合は、送迎時などに「いつもすみません、本人にも話しています」と一言伝えておくと関係がこじれにくくなります。謝罪の主役は親ではなく、子供自身が直接「さっきはごめん」と言えるよう促すことが最も大切です。
コーチに相談してもいいのでしょうか?
かまいません。家庭で取り組んでいること(代わりの一言を決めた等)を共有し、「練習中にいい声が出ていたら流してもらえると助かります」と協力をお願いする形が理想です。ただしコーチ自身がミスを強く叱責するタイプの場合、子供はその真似をしている可能性もあります。チームの指導方針ごと見直す視点も持っておきましょう。
責められた側の子がかわいそうで、つい強く叱ってしまいます。
その優しさは正しい感覚です。ただ、強く叱ることは「ミスした人を強く責める」姿を親が見せることでもあります。伝えるべきは「気持ちはわかる。でもあの言い方はチームを弱くする」という事実です。感情ではなく、行動の結果を淡々と伝えるほうが届きます。
本人は「本当のことを言っただけ」と譲りません。
事実かどうかではなく「言い方と目的」の話に切り替えましょう。「そのとおりかもしれない。で、あの言い方でチームは強くなった?」と問いかけます。正しさを武器に人を傷つける癖は、高学年以降の人間関係でもつまずきの原因になります。事実の指摘は、相手が受け取れる形にして初めて価値が出ることを、時間をかけて伝えてください。
まとめ:本気さは才能。向け先を変えれば武器になる
- 仲間のミスを責めるのは、本気で勝ちたいエネルギーの向け先間違い
- 「気持ちはOK、行動はNG」を分けて伝える
- 試合直後は何も言わない。帰り道で気持ちを言語化、翌日に短く作戦会議
- 責める言葉は「代わりの一言」に置き換える。親子で3つ決めておく
- 家庭の会話が「ミスを責める文化」になっていないかを先に点検する
味方のミスに本気で腹を立てられる子は、チームの勝敗を自分事にできる子です。その火を消さずに、向け先だけを変えてあげてください。「今の一言、チームを強くしたね」と言える日は、必ず来ます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・専門的指導の代わりになるものではありません。お子さんの心身に気になる様子がある場合は、専門家にご相談ください。



